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今やインプラント療法は科学的にも臨床的にも信頼性の高い治療法として確立されつつあります。また機能的、審美的に自分の歯と思えるほどの回復ができるようになりました。
その上残存する他の自分の歯の保護に役に立つなどの利点が多く、日常生活に潤いを取り戻す魅力的な治療法といえます。しかし、その治療のゴールとしてインプラントが長く安定するにはさまざまなリスクを正確に判断し、安全性と高い成功率を最優先した科学的根拠に基づいた治療法の選択が求められます。
そのリスクのひとつに歯周病が挙げられます。その歯周病は歯周病菌の感染によるもので35歳以上で80%の人が罹患し、50歳以上の抜歯の原因の60〜70%は歯周病といわれています。歯科医師は中等度〜重度の歯周病に罹患した歯でも何とか保存しようと努力してみます。現在の先端医療では歯の周囲の骨が歯周病や外傷で吸収してもある条件を満たせば、骨が吸収した歯の周囲に再度骨を作成する再生療法が可能になってきました。 失われた骨を作成し、咬合に耐えうる良好な歯周の環境が維持できてはじめて咬合咀嚼機能が回復したといえます。
歯周病にかかった歯が保存不可能となった場合は抜歯せざるを得ません。抜歯をすればかみ合わせが必要なため患者さんは欠損部にブリッジ、義歯、インプラントにするかの選択を迫られます。この抜歯した部位へインプラントを植立する場合、歯科医師は患者さんの歯の健康度に対する関心度(デンタルIQ)、歯磨きの状態、他の残存歯のカリエスや歯周病の状態、咬合状態、全身状態など患者さんの全てを観察し治療が可能かどうか診断します。
残存する歯が歯周病に罹患していると、同口腔内に植立されたインプラントの成功率は通常90数%台のインプラント成功率が70数%台まで下がるというデータがあります。歯周病は多くの細菌によって歯周組織が侵されていく疾患であるので、その原因となっている歯周病菌がインプラント周囲に集落してインプラント周囲の組織(粘膜、骨)に炎症を引き起こし、最終的には折角植立したインプラントを除去しなければならない結果に陥ります。私たち歯科医は歯周病を持った患者さんにはインプラント植立前に歯周病を完璧に治して、口腔内の細菌数を減らしておいて、炎症のない状態にコントロールさせておいてからインプラント手術を行うようにしています。
また治療が一応終わり、咬合が回復した後もインプラントの周囲の炎症や治癒した他の残存歯が歯周病にならぬように定期的な管理が必ず必要になってくるのです。またもう1つのリスクの喫煙があります。この喫煙が歯周病での骨再生療法の失敗やインプラントの失敗も通常より2,6倍の原因となり、タバコの本数によりインプラント植立時から成功率が下がってきます。インプラント手術後の治癒が遅れ、感染したり、インプラントと骨との癒着ができないことがあるのです。喫煙は最高でも1日10本以下に抑えたいものです。
インプラント療法は患者さんの殆どのニーズに答えることが出来き、術後15年、20年と長期に機能し続けることが証明されています。しかし1度歯周病に罹患した患者さんは、インプラントの成功率が低下する傾向にあります。インプラント治療をする場合でも歯周病をしっかりとコントロールしておくことが必要です。そこに満足のいくライフスタイルを獲得することができると思います。
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